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ポプリについて
フランス語でpot-pourri。ポプリという発音は、熊井明子さんのエッセイで有名になりました。古い和訳には「雑香」などの表現も見受けられます。
香りのよい花やハーブ、スパイスや果実などをミックスして、部屋の中やタオル、シーツなどを穏やかに薫らせるためのものです。

私は最初にポプリからはいったものですから、香料の勉強をはじめたとき、「目で見てわからない」ということに一番戸惑いました。考えてみれば当たり前のことなのですが、それまでは一目でわかった柑橘類もシソ科のハーブも根茎類も樹脂もみんな液体になって同じような壜に入っていて、区別するのは自分の嗅覚だけ(少しは色がついているものもありますが、たいていは無色透明だし)というのはけっこう身の引き締まる思いでした。おまけに精油になるとハーブの状態の時と香りが違って感じることも多いですし。

嗅覚のみをひたすら追求する調香やアロマテラピーと違って、ポプリの楽しみには見た目も大きな要素と思います。まるでフラワーアレンジメントかと思うくらい色も綺麗で容器も凝ったポプリの写真が海外の雑誌なんかによく掲載されていますよね。もともとは寒い地域の人々が、長い冬の間も花を楽しめるように作ったものとも言われています(なんだか東北地方の漬物みたいですが)。
カゴやアンティークの陶器に飾るのもいいですが、私は理科実験用のシャーレに入れるのが好きでした。ふたをしても中身が見えるし。

私は今は作っていませんが、はまっていた頃は作る過程が一番楽しかったですね。完成してしまうと興味がうすれ、じゃまになったりしてすぐ人にあげてしまっていました。内心迷惑に思っていた人もいたかも。こういうものって断りにくいですし。反省しています。

裁縫が好きな方は、ぬいぐるみの中にポプリをつめたり、レースやリボンでサシェを飾ったりなど、外側に手間をかけることが多くなるみたいですね。本人さえ満足していれば文句つける筋合いではないですけど、凝りすぎるとよほどセンスがない限り貧乏たらしくなることが多く、個人的には好きになれません。単純で実用的なサシェの方が美しいと思います(自分が裁縫が下手だからではないのですが…たぶん)。
以前アメリカに行った友達が大きなサシェを買ってきてくれたのですが、ナイロンのフリルぴらぴらの安物の下着(下品で失礼)みたいなやつで閉口しました。本人はえらく気に入ったらしく、自分用にも一つ買っていましたが…。

以前はドライポプリがハーブティと並べて売られていたため、間違えて買っていくお客さんがあって問題になったそうですよ。今ではそんなことないとは思いますが。
もし、「ハーブティと思ってポプリを煎じてしまった」という方がいらっしゃいましたら、よろしければ体験談をお寄せください。

ちょっと脱線。
ポプリという可愛らしい言葉の響きは、ある種の嗜好を持つ方々の妄想をかきたてるらしく、とんでもないエロ雑誌のタイトルに使われているのを見たことがあります。その雑誌が今でも存在するかどうかは未確認ですが、できれば改名をお願いしたいですね。

ドライ・ポプリ
香りの良い花や葉(ハーブ類)をかりかりに乾燥させ、砕いたスパイスやエッセンシャルオイルを加えてしばらく(平均二週間程度)密閉して熟成させたもの。
スパイスを砕くのには乳鉢でやりますが、ない場合はガーゼに包んで金槌でたたきます。ものすごい音がしますので周囲への配慮が必要かも。

イスト・ポプリ
粗塩に半乾きの花びら、乾燥ハーブやスパイス、エッセンシャルオイルを加えて作ります。名前の通り少し湿った感じに仕上がります。熟成期間は一〜二ヶ月程度。見た目はあまりよくありません。砂糖や蜂蜜を使った処方もあります(現在作っている方がおられるかはわかりませんが)。
これは非常に長持ちしまして、中には数十年香りが持続するものもあるとのことです。日本ではお店で売っているのは見かけませんね。海外にはあるようですけれど。

オレンジ(フルーツ)・ポマンダー
生のオレンジに串などで穴をあけ、クローヴ(釘のような形のスパイス)を一面にさして粉末のスパイス(シナモンなど)をまぶし、乾燥させたもの。作っている過程ではオレンジの香りをたっぷり堪能できます。レモンやリンゴでも可。乾燥させる過程で腐らせてしまうこともあるので、小さ目の果実を選んだ方がいいようです。一度カボス(スダチより少し大きめの柑橘類)で試してみましたらけっこううまくできました。

欧米ではクリスマスの頃作り、プレゼントにするそうです。クリスマスの香りといえばオレンジ・ポマンダーと答える人も多いとか。

一度作り方を覚えると次々に作ってみたくなるもののようで、先日ポプリを覚えたての知り合いから一つ貰いました。それがまた不細工で、どうしようか困っています(血も涙もない…)

サシェ
ポプリやハーブをつめた匂い袋のことをサシェと呼びます。バッグや引出しに入れておいて香りを楽しむものです。香りが薄れてきたら手で揉んでみましょう。
私は少し長く旅行するときにはラヴェンダーとミントを適当につめたサシェを作って持って行きます。鞄をあける度に、ふっと香りが漂うので、想像以上に心を和ませることができます。

シマリング・ポプリ
あまり知られていないようですが、こういうものがあるそうです。これはアロマポットと同じように、水に入れて火にかけ、香りを漂わせるために作られたポプリだということです。欧米では冬などにストーブにのせて部屋を薫らせたりしたのだそうです。まるで煮物みたいですが、もちろん食べるわけではありません。
私も話を聞いただけで、実物はみたことがないのです。詳しくご存知の方がおられましたら、教えていただければ幸いです。

ポプリの虫について
私は現在ポプリは作っていません。上で述べた通り、ポプリには香り以外の要素が多く、それはそれで結構なのですが、自分には調香やアロマテラピーのように嗅覚のみ追求する形の方が合っているような気がしたこと、それとまことに身もフタもない理由なのですが、とにかくポプリには虫やカビがつきやすいのです。

湿気の多い日本(少なくとも東京より南)では管理が難しいと言わざるを得ません。私のアパートが古く、虫が出やすい環境ということもあるのかも知れませんが。「動くポプリ」という怪談さえ存在します。なんで動くのかって…?わかりませんか?

普段は密閉容器に入れておいて、香りを楽しみたいときだけ蓋をとる、というのが無難な使い方です。
熊井明子さんは、高温多湿の日本ではポプリの寿命はせいぜい一年と言われていました。ちゃんと密閉容器で保存しての話です。インテリア雑誌みたいに皿に盛って飾りたいのが人情でしょうが、いつも空気にさらしておくのなら、ずっと寿命は短くなります(虫の被害にあわなくても、色や香りはあせますし)。消耗品と割り切って早めに処分できれば気も楽でしょうが、そうはいかないものも多いですし。

うちでポプリを食い荒らすのはいつも同じ虫で、茶色くて2〜3ミリくらいのカブトムシの角のないような奴(いわゆる甲虫)です。出しっぱなしにしておいたポプリだけでなく、サシェもやられました。布を食い破って侵入し、中で繁殖しているのを発見したときには卒倒しそうになりました。その手のものをお持ちの方は一度点検されることをお勧めします。気持ち悪いですが、人を刺したり、ハーブ類以外に被害を与えることは私の知る範囲ではありません。

先日ポプリにこの虫が発生してしまった方からメールを頂きました。オレンジの皮を主体としたもので、結局処分されたそうですが、お気の毒な事に大事な留学の記念品だったとか。私もオレンジの花のハーブティについてしまったことがあります。ラヴェンダーも好むようで、とにかく癖の強いスパイス以外ならなんでも食い荒らすといった調子でした。

残念ながらこの虫については、一度発生してしまったら発生源ごと捨てる以外駆除は不可能と考えた方がいいと思います。それと厄介なことに、ポプリを捨てたり完全密閉しても、すぐに部屋からこの虫がいなくなるわけではないのです(どうやって生きてるのかは知りませんが)。殺虫剤を撒くのは嫌だったので、見つけたら手で捕殺しました(もちろん素手でなくティッシュで)。幸い動きが鈍い虫なので、根気良くやっているうちに根絶できたようです。

ポプリの材料は殺菌するわけにはいかないので、原料に虫の卵が混入していて、孵化するケースもあるのだそうです。この虫がそうなのかはわかりませんが、前述の方も私もヨーロッパで購入したものに発生しているので、その可能性はあるのかも知れません。
日本では見ることのないような珍しい蛾が孵化したという話も聞いたことがあります。こればかりは経験せずにすませたいものですね。

お店で売っているポプリは一見ちゃんと密閉してあるようなものでも、意外なところに虫の通り道があったりするのでご注意ください。とにかく購入したら壜か丈夫なビニールのシールバッグなどに移すことをお勧めします。


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